UX検定基礎とHCD基礎検定を受けてみての比較と感想

UX検定基礎とHCD基礎検定を受けてみての比較と感想

本記事はAsiaQuest Advent Calendarの18日目です。

目次

    はじめに

    サービスデザイン課の花井です。
    今回は私が直近で受験した「UX検定基礎」と「HCD基礎検定」という2つの試験について紹介します。

    最近、サービスやビジネスにおけるユーザー体験(UX)の重要性が高まっています。
    従来、専門家だけが学ぶものとされていたUXに関する知識ですが、今ではより多くの人々にとって必要な知識となりつつあります。

    しかしながら、「どのようにしてUXの知識を身につけるべきか」や「自分がどれほどUXを理解しているかをどう評価すれば良いか」について不明確な点が多いと感じる方もいると思います。

    本記事が、UX学習の一環として、その始まりのきっかけとなれば幸いです。

    UX検定基礎について

    • 試験名称:UX検定基礎(HCD検®認定)
    • 運営団体:一般社団法人UXインテリジェンス協会(UXIA)
    • 受験資格:なし
    • 対象者:ビジネスパーソン全般
    • 受験料:10,890円(税抜き 9,900円)
    • 実施形式:知識問題(単一選択式:100問)/ オンライン実施(自宅受験)
    • 出題範囲:シラバス参照
    • URL:公式サイト

    ※2023年12月現在のものです、内容は変更される場合がありますので最新情報は公式サイトを御覧ください。

     

    受験の流れ

    試験は2023年12月現在でおおよそ4ヶ月ごとに実施されています。
    試験実施日の4ヶ月ほど前から申込受付が開始され、1ヶ月ほど前に締め切られます。
    日経ビジネススクールの申し込みページから受験申し込みできます。

    試験の1週間ほど前に受験番号やマイページのURLなどがメールで送られてきます。
    このタイミングで接続テスト及びデモ試験を実施できます。
    当日焦らないためにも、前日までには接続テストを実施しておくことをおすすめします。
    上記のメールは前日にもリマインドされるので忘れずに確認しておきましょう。

    当日はオンライン実施のため自宅など好きな場所で受験できます。

    合否及び得点は試験の1ヶ月ほど後にマイページから確認出来ます。
    確認ができるようになったタイミングでメールでの連絡があります。

    合格基準点などは公表されておりませんが、8割程度は正解する必要があると思います。

     

    勉強方法

    続いて、私の例を元に勉強方法について紹介します。
    勉強開始時の私のUI/UXに関する知識としては、基本的な単語は理解しているが具体的な活用方法についてはよく知らないという状態でした。
    また、フロントエンドエンジニアとしての経歴が長いため、UXデザインやプロダクトマネジメントについては多少の理解はありましたが、認知心理学や人間工学といったアカデミックな内容については知識が薄い状態でした。

    公式サイトで紹介されている主な学習方法は以下です。

    • 推奨図書
    • シラバス
    • 動画コンテンツ

    あくまで推奨なのでこの学習方法にこだわる必要はありませんが、私が受験した時はまだ試験に関する情報も少なかったため、紹介されている方法を実践しました。
    学習時間は、トータルで40時間程度です。

    ◯推奨図書

    以下の本が推奨されています。

    私はそれぞれの本を一度読み、気になる部分については繰り返し読んで理解を深めるという形を取りました。
    「アフターデジタル2」と「UXグロースモデル」は読み物としても面白く、勉強をしているというよりも、UXについての具体的な事例を見ながら知識を深めていくといった感じでした。
    「人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻)」と「ユーザビリティエンジニアリング」はどちらかというと教科書的で、単語や用語の意味を理解するには良いと思います。

    ◯シラバス

    公式サイトのシラバスを見てもらうと分かる通り学習範囲はかなり広いです。
    重要ワードが書かれているので、それぞれのワードについて個人的に調べ、言葉の意味だけでなく、具体例も含めて理解するようにしました。

    ◯動画コンテンツ

    有料の動画コンテンツも用意されていますが、今回私は利用しませんでした。
    全8回分あるので、動画での学習に慣れている人はこちらを利用しても良いと思います。

    試験を受けてみて、個人的には「ユーザビリティエンジニアリング」を読んだことが一番効果があったと感じます。
    もちろん、私の受験前の状態や学習の癖などもあるので一概には言えませんが、教科書的な内容で非常に学習がしやすかったです。

    UX検定基礎の感想とメリット

    感想

    第2回の試験を受験したのですが、シラバスの内容から幅広く出題された印象です。
    100問を100分で解答するということで時間配分も大切でした。
    おおよそ80分で一通り解答できたのですが、解答の見直しや自信のない問題を再度考えていたら100分はギリギリでした。

    推奨図書やシラバスの内容をしっかり勉強しないと合格は難しいと感じました。

    公式サイトに記載のある試験の目的の通り、出題範囲のことが理解できていれば、UXに対して一定の理解を出来ているといえると思います。
    網羅的に学習し理解度を試験で確認ができるので、自身のUXについての知識で足りないところを理解できるのはすごく良かったです。

     

    試験のメリット

    あらゆる試験に言えることですが、合格か不合格かも重要ですが、学んだことをどれくらい活かせるのかも重要です。
    UX検定基礎はUXの基礎を学べるので応用できる範囲も広く、すぐに実践しやすい考えを学べる試験です。

    また、この試験を合格しているということで、UXについての最低限の知識を身に着けていることは十分証明できるので、試験を受ける価値は高いと思います。
    今後UXに関する知識はビジネスにおいてより重要になってくるため、現在UXについてあまり理解していなかったり、知識が少ない方でもまずはこの試験の合格を目指してみるのも良さそうです。

    HCD基礎検定について

    • 試験名称:HCD基礎検定
    • 運営団体:一般社団法人人間中心社会共創機構(HCS共創機構)
    • 受験資格:なし
    • 対象者:ビジネスパーソン全般
    • 受験料:一般 15,000円 学生 8,000円
    • 実施形式:知識問題(単一選択式:50問)/ オンライン実施(自宅受験)
    • 出題範囲:シラバス参照
    • URL:公式サイト

    ※2023年12月現在のものです、内容は変更される場合がありますので最新情報は公式サイトを御覧ください。

     

    受験の流れ

    試験は2023年12月現在で年3回(3月、6月、11月)実施されています。
    試験実施日の3ヶ月ほど前から申込受付が開始され、1ヶ月ほど前に締め切られます。
    Peatixから受験申し込みできます。

    申し込みをすると試験の2週間ほど前から事前学習システムの利用ができます。
    検定実施日まで使用可能なので、基本的にこのシステムを活用しながら学習を進めます。
    試験1週間ほど前に受験番号やマイページのURLなどがメールで送られてきます。
    マイページと事前学習システムは別々のシステムのためそれぞれログインができることを確認する必要があります。

    UX検定基礎と同様、当日はオンライン実施のため自宅など好きな場所で受験できます。

    合否及び得点は試験の2週間ほど後にマイページから確認出来ます。
    確認ができるようになったタイミングでメールでの連絡があります。

    UX検定基礎同様、こちらも合格基準点などは公表されておりませんが、8割程度は正解する必要があると思います。

    合格すると、合格認定証と検定ロゴをダウンロードできます。

     

    勉強方法

    私の場合、UX検定基礎を先に受けていたため、UXについてはある程度理解した状態から学習を始めています。
    公式テキストはまだ存在しないため、事前学習システムとシラバスの情報が公式で提供されている唯一の学習方法です。
    とはいえ、HCDの参考図書として「HCDライブラリー」があるためそちらを元に勉強すると良いです。
    学習時間は、トータルで25時間程度です。

    ◯事前学習システム

    動画コンテンツと、動画コンテンツの内容をスライド化した資料です。
    出題範囲について図を交えながら丁寧に解説してくれているので、紹介されている内容をしっかり理解することが重要です。

    ただ、動画や資料を見ただけでは理解できない部分もあるため、理解できなかった部分については別途書籍やwebで知識を補完する必要があります。

    試験内容を振り返ってみても、事前学習システムの内容をしっかりと理解できていればある程度解答出来ます。
    とは言え、高得点を取ろうと思ったら、プラスで学習する必要があります。
    特に、それぞれの用語の違いであったり、使われ方については理解をしておくと良いです。

    HCD基礎検定の感想とメリット

    感想

    先にも述べた通り、事前学習システムの内容をしっかりと理解する必要がありました。
    また、事前学習システムが使えるようになるのが試験の2週間前からなので、もっと早くから学習を始めたい人や直前に学習する時間を取れない人は書籍などで学習を進める必要があります。

    50問を50分で解答するため、テンポよく解答していかないと時間が足りなくなってしまいます。
    すぐに解答できないものに関しては飛ばしながら、後から時間をかけて解答するのが良いと思います。

    人間中心デザインの理念から実際の運用まで学ぶことができるので、人間中心デザインの入門としてはすごく良かったです。

     

    メリット

    UX検定基礎と同様、この試験を合格することで人間中心デザインに関する基礎的な理解はできたと証明できます。
    人間中心デザインはUXデザインやサービスデザインといった手法にも通じる基礎的な考えなので、人間中心デザインを抑えておくことで他の知識や手法を学びやすくなります。

    人間中心設計推進機構(HCD-Net)内のワーキンググループが制定している試験なので、試験の目的や取り扱う内容もしっかりしています。
    受験者本人に対するメリットはもちろんですが、この試験を推奨する企業や団体にとっても人材教育におけるメリットがある試験です。

    比較と分析

      UX検定基礎 HCD基礎検定
    対象者 ビジネスパーソン向け ビジネスパーソン向け
    受験料 10,890円 一般 15,000円 学生 8,000円
    実施形式 知識問題(単一選択式:100問)/ オンライン実施(自宅受験) 知識問題(単一選択式:50問)/ オンライン実施(自宅受験)
    特徴 ユーザーエクスペリエンス(UX)向上の取組みに欠かせないスキルとマインドを実践的かつ体系的に身につける 人間中心デザイン(HCD)基礎知識体系を身につける

    比較してわかる通り2つの試験は対象者や実施方式など非常に似ています。
    違いとしてはHCD基礎検定が名前の通り人間中心デザインに重きをおいているのに対して、UX検定基礎はUX全般についての知識習得を目指している点です。

    • UX検定基礎:UXを網羅的に身につけたい人向け
    • HCD基礎検定:UXデザインやサービスデザインといった考え方の基礎となる人間中心デザインを身につけたい人向け

    個人的には上記のような捉え方で良いかなと思います。

    おわりに

    今回は私が実際に受験した「UX検定基礎」と「HCD基礎検定」の紹介と比較をさせてもらいました。
    どちらの試験も比較的新しい試験ですが、試験の内容や目的がしっかりした試験です。
    これまでUX分野は入門的な試験がなく上位資格である人間中心設計スペシャリストなどを目指す必要がありました。
    今回紹介した2つの試験ができたことでUXを学習するきっかけやUXを学習する際のファーストステップが出来たのは良かったと思います。

    弊社内でも、UX検定基礎に興味を持って受験する人が増えてきており、UX検定基礎を一緒に学習するためのslackチャンネルが作成されるなど、社員同士で協力しながら目指す良い目標になっています。

    今後、UXを学習しやすい環境が整って、より多くの方がUXについて学ぶ機会を増やしてくれたら嬉しいです。

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