社内での技術書輪読会の取り組みについて
目次
本記事の概要
社内で有志を集い2冊の本について輪読会を開催しました。
今回はその取り組み、そして実際にやってみてどうだったのかということを体験記のような形で共有させていただきます。
これから輪読会を開こうと思っている方、また今実施されている方の参考になれば幸いです。
1.輪読会について
まずは、本記事における「輪読会」とはどのような目的で実施しているのか簡単に説明させていただければと思います。
私たちは以下の3点を目標にして輪読会を開催しております。
- 1人だと読み切れない/読みにくい本をみんなで読む
- 本の内容のインプット・アウトプットの機会を創出することで、理解を深める
- 業務上ではあまり関わることができない他部署のメンバーと交流する
2.輪読会で読んだ本について(1冊目)
まず、1冊目の輪読会では通称SRE本と呼ばれている以下の本を使用しました。
『SRE サイトリライアビリティエンジニアリング』
本書の内容自体は割愛しますが、SREのバイブルと位置付けられている名著になります。
この本自体は34章と、かなり量のあるものとなっていたのですが、輪読会に参加したメンバー全員がSREに関して知識がそこまで多くなかったことから、「実践編」と位置付けられた9章までの内容を読み進めることで合意しました。
また、SREについては会社としても推進していきたい内容だったため、上長に相談のうえ、本輪読会の時間は業務時間の扱いとしてよいと、許可をいただきました。
※SREとは、Site Reliability Engineering(サイト信頼性エンジニアリング)のことで運用や自動化に対するいくつかの方針を指します。これを一般化したものをDevOpsとして捉えることもできます。
※DevOpsとは、Development(開発)とOperation(運用)を組み合わせてできた言葉で、開発担当者と運用担当者が協力してスムーズに開発、運用をすすめ、システムの価値を継続的に向上させるための概念です。
参考:https://www.oreilly.co.jp/books/9784873117911/
https://circleci.com/ja/blog/what-is-devops/
3.どのように輪読会を進めたのか(1冊目)
輪読会の開催は1週間に1回、1時間で設定し、特に事前に予習はせずに、約4か月かけて以下の流れで進めていきました。
- 対象の本を読み進める
- 本の内容を各々話し合うことで振り返る
- 会社内の他メンバーも閲覧できる形にまとめる
それぞれの詳細としては、以下のような形になります。
対象の本を読み進める
参加のハードルを低くしたかったので、今回の輪読会では特に予習をせずに、輪読会時間中に40~50分を使用して対象の本を読み進めることにしました。
また、業務状況次第では参加できなくなる可能性もあったため、最小履行人数を3人とし、それ未満になった場合は次週にスキップすることにしました。
基本は輪読会1回の実施で1章分読むことを目標としていましたが、明らかに分量が多く、読み終わらない章については、1章を2~3分割する形で読み進めるようにしました。
本の内容を各々話し合うことで振り返る
残った時間を使用して各々で読んだ箇所に関する感想や印象に残った点を話し合いました。
また、本書はSREの知識がない中で読むと理解しにくいところも多くあったので、不明点を上げ、ネットで検索しつつメンバー同士で話し合い、自分達の理解できる内容に落とし込むという作業を行いました。
会社内の他メンバーも閲覧できる形にまとめる
感想を話し合うのと並行する形で、スプレッドシートにメモを残し、その内容を社員であれば閲覧可能なサイトに転記し、だれでも内容が閲覧できる状態にしました。
また、感想だけだと後々わからなくなりそうなこともあったので、読み進めた部分の概略についてもメモとして記載するようにしました。
4.輪読会の振り返り(1冊目)
一通り対象の本を読み終わったところで、全体的な本の内容の振り返り、及び輪読会自体の取り組みについてKPTを実施しました。
参加者が考えたKeep、Problemは以下のようになりました。
Keep | Problem |
---|---|
|
|
それぞれについて諸々意見を出し合ったのですが、ここでは太字にした内容について詳細に取り上げようと思います。
・参加するためのハードルが低かった
実施時間を通常業務時間直後の18:00~としたことで、無駄な待ち時間なく開始することができ、本自体も輪読会中に読むようにしたため、あらかじめ予習する時間を作らず、ストレスなく実施することができました。
業務時間として扱ってよいと許可をいただいたことも、参加ハードルが低くなった要因かと思います。
また、輪読会の時間を1時間と設定したことで、特に中だるみせずに有意義なインプット、アウトプットの時間とすることができました。
・参加率/発言率が高かった
振り返りの時間にどんな発言でもできるようにしたことで、不明点や他の人の視点について気軽にディスカッションすることができました。
・タイムマネジメントができていない
5分程度の遅刻であれば、全員が集まるのを待ってから開始していたことや、読むのに集中した結果、想定していた読書の終了時間をオーバーし、振り返りの時間が十分に取れなくなってしまうケースがありました。
また、振り返りの時間に議論に熱中してしまい、長いときには輪読会の終了時間を30分近くオーバーしてしまうこともありました。
Problem、特にタイムマネジメントの件の反省を踏まえ、2冊目の輪読会に向けて、以下のTryを設定し、試みることにしました。
Try |
---|
|
5.輪読会で読んだ本について(2冊目)
2冊目の輪読会では以下の本を使用しました。
『システム運用アンチパターン』
SREについて多少知識がある人向けの内容となっていましたが、様々な事例を用いたDevOpsの検討/導入に関する内容でSRE本よりは比較的読みやすい本となっていました。
SRE本とは異なり、比較的章ごとに独立した内容であったことから本輪読会の開催前に各々が興味がある章を、全12章の中からリストアップして希望の多かった章を計7章分読み進めることにしました。 また、あわせて年内に読み終わることを目標にして進めました。
参考:https://www.oreilly.co.jp/books/9784873119847/
6.どのように輪読会を進めたのか(2冊目)
基本的には1冊目の時と同様、おおよそ3か月かけて以下の流れで進めていきました。
- 対象の本を読み進める
- 本の内容を各々話し合うことで振り返る
- 会社内の他メンバーも閲覧できる形にまとめる
ただ、1冊目のProblem/Tryの内容を踏まえ、多少やり方を工夫してみました。
1冊目と共通した内容は省略し、変更した部分を以下に記載しました。
対象の本を読み進める
開始前に読書時間/ページ数、タイムキーパーを決め、時間を過ぎたタイミングでタイムキーパーが声掛けをすることでタイムオーバーを防ぎました。
また、遅刻者がいる場合でも時間になったらすぐに読み始めるようにしました。
本の内容を各々話し合うことで振り返る
終了時間になったタイミングで話の区切りをつけ、輪読会を止めるようにしました。
会社内の他メンバーも閲覧できる形にまとめる
要約、及び閲覧用ページをまとめるメンバーを開催毎に別々にし、1人の負担にならないようにしました。
7.輪読会の振り返り(2冊目)
一通り対象の本を読み終わったところで、1冊目の時同様、振り返り、及びKPTを実施しました。
こちらもKeepについては1冊目と共通した内容は省略します。
Keep | Problem |
---|---|
|
|
今回のProblemに対しては以下のTryを策定してみました。
Try |
---|
|
8.まとめ
同じ題材で輪読会を実施したことで、より深く知ることができました。
また、連続して実施したことで2冊目の輪読会では、1冊目の反省を生かすことができました。
輪読会は全員のスケジュールを合わせたり、実施方法を考慮したりと色々大変なことがありますが、自分では読まない本を読み、他の人の意見を合わせるなどなかなかできないことする良い機会かと思います。
最後に、この輪読会の参加者の声を紹介いたします。
- 読んだ直後に自身の経験などを踏まえて話し合いができ、より理解を深めることができました。
- 会社のメンバーと共に輪読会を行うことで、共通の言葉を持つメンバーを増やすことができました。
- O'REILLYなどの章数の多い本は1人では読みにくいので、輪読会として実施できたのがよかったです。
- 業務時間扱いとして輪読会を開催できたことで、非常に参加しやすく意欲がわきました。
- 気軽に質問/話し合いができたので、着実にそれぞれの本の内容を理解していくことができました。
- ずっと勉強したいと思っていたSREの分野について手をつけるきっかけになりました。
- 一緒に読んだメンバーと参画している案件で同じ本を読んだ前提で会話できたり、業務に活かす方向へ動けています。
この内容を読み、この取り組みを実施してみよう、あるいは実施している輪読会の参考になったという声があれば幸いです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
アジアクエスト株式会社では一緒に働いていただける方を募集しています。
興味のある方は以下のURLを御覧ください。