在宅勤務エンジニアの心を守る|今日からできる「セルフコンパッション」実践ガイド
本記事はアジアクエスト Advent Calendar 2025の記事です。
目次
はじめに:ひとりの時間が長いと、心もバグりやすい
親しい友人が仕事で失敗したとき、あなたはどんな言葉をかけますか?
どうしてこんなミスをしてしまったの?
もっとちゃんと確認すればよかったのに……。
周りに迷惑かけてばかりじゃないか。
このように責めるような言葉を、友達に向けて言う人はきっと少ないでしょう。
でも不思議なことに、自分自身にはそれを簡単に言ってしまうことがあります。
オフィスにいれば、同僚との雑談や何気ない励ましで切り替えられることも、
リモートワークだと一人で抱え込みがちに。
その結果、ネガティブな感情がぐるぐると頭の中でループしてしまいます。
そんなときに役立つのが、「セルフコンパッション(self-compassion)」 という考え方です。
セルフコンパッションとは?
セルフコンパッションは、心理学者 クリスティン・ネフ(Kristin Neff) が2003年に学術的に定義した概念です。
自己肯定感のように比較や成果に基づく自己評価に依存せず、「つらい時の自分に、友人のように優しく接する」姿勢を育むために提案されました。
ざっくり言うと、セルフコンパッションとは「自分への思いやり」のことです。
以下の3つの視点を意識することで、自分をやさしくケアすることができます。
- マインドフルネス:感情を否定せずに観察する
- 共通の人間性:失敗は誰にでもあると理解する
- 自分への優しさ:責めず、いたわりの言葉をかける
これらを日常の中で少しずつ意識していくことで、より健全な心の使い方ができるようになります。
実践:セルフコンパッションの3ステップ
難しいことは要りません。
以下の3ステップを使って、思考の流れを少しずつ整えていきましょう。
🩵 Step 1:マインドフルネス — 今の感情を観察する
「まずは感じていることを、否定せずに受け止める」
書き方のヒント:
・何があった?
・どんな気持ちが湧いてきた?
・体のどこにそれを感じる?
例:
コードレビューで指摘が多かった。
恥ずかしい、情けない気持ち。
胸のあたりが重い感じがする。
🩶 Step 2:共通の人間性 — 「自分だけじゃない」と思い出す
「この気持ち、他の人もきっと感じている」
書き方のヒント:
・同じ状況の人なら、どう感じる?
・他のエンジニアにもこういう経験がある?
例:
コードレビューで直されるのはよくあること。
初めから完璧な人はいない。
自分だけがダメなんじゃない。
💗 Step 3:自分への優しさ — 労わりのメッセージを送る
「大切な友達に話しかけるように、自分にもやさしく」
書き方のヒント:
・今の自分に、どんな言葉をかけたい?
・友達が同じ状況だったら、なんて言う?
例:
よく頑張ってるよ。
一人でリモートでやるのは本当に大変。
少し休もう。温かいお茶でも飲んで、またゆっくり始めよう。
実践のまとめ:完璧よりも、気づけた自分を大事に
ここまでの流れをおさらいしてみましょう。
-
Step 1:マインドフルネス
→ 「いま、どんな感情があるのか」を観察する
(例:悔しい・焦っている・恥ずかしい など) -
Step 2:共通の人間性
→ 「これは自分だけじゃない」と思い出す
(例:誰にでもミスはある・完璧な人はいない) -
Step 3:自分への優しさ
→ 「友達に話しかけるように、自分に声をかける」
(例:よく頑張ってる・少し休もう・またやればいい)
この3ステップを通してやっていることは、
「感情を否定せずに受け止めて」「孤立した気持ちをほぐして」「自分にやさしく接する」こと。
たったそれだけのシンプルな流れですが、繰り返すほどに効果が出てきます。
ポイントは、完璧にやろうとしないこと。
「ちょっと落ち込んでるな」「今日はつらかったな」と気づけただけでも、それがもう実践です。
短いメモでも、心の中のつぶやきでもOKです。
自分を責める時間を、少しずつ「自分を理解する時間」に変えていく。
その積み重ねが、在宅勤務でも心を安定させる土台になります。
おわりに:自分を責めるより、まず寄り添ってみよう
在宅勤務では、誰にも相談せずに「自分でなんとかしなきゃ」と思う場面が増えます。
でも、その裏で自分を責め続けてしまうと、じわじわと心がすり減ってしまうことも。
そんなときは、「ダメだ」とジャッジするのではなく、「そう感じてるんだね」と寄り添うことから始めてみませんか?
セルフコンパッションは、一度で身につくものではありません。
けれど、繰り返していくことで、自分との関係が少しずつ変わっていきます。
書くのが苦手だったり、言葉にしづらいときは、ChatGPTのようなAIの力を借りてみるのもおすすめです。
心のメンテナンスも、日々の習慣にしていきましょう。
自分をいたわることは、弱さではなく“強さ”です。
参考図書
- 『マインドフル・セルフ・コンパッション ワークブック』
クリスティン・ネフ、クリストファー・ガーマー著/富田拓郎 監訳/大宮宗一郎、菊地創、高橋りや、井口萌娜 訳(星和書店, 2019)
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