ロジカルシンキングをクリティカルシンキングしてみた
本記事はアジアクエスト Advent Calendar 2025の記事です。
目次
はじめに
皆さん、こんにちは。コンサルティング部の庄司です。突然ですが、「今日はこの果物がお得!と思って買ったけど、他のお店の方がもっと安かった……」や「気に入って買ったけど、一度も着ていない服がある」など、後から「あれ?」と思うことはありませんか?
私も、通うだろうと(ロジカルに)意思決定してスポーツジムに入会したものの、結局は幽霊部員になり、ただただ貯金残高だけが減っていく経験を何度もしてきました。
ビジネスの世界でも、答えを出すためにはロジカルシンキングが求められます。しかし、ロジカルシンキングで導き出した「正解」が、必ずしも常に最善とは限りません。
今回は、論理的に物事を考えるロジカルシンキングと、それを補うクリティカルシンキングについて、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
ロジカルシンキングとは?
まずは、Geminiにロジカルシンキングの定義を聞いてみました。
ロジカルシンキング(論理的思考)とは、物事を要素に分解して整理し、筋道を立てて矛盾なく考える思考法です。
なるほど。ちょっと抽象的なので、続きを引用します。
具体的には、以下のような特徴があります。
要素分解(MECE:Mutually Exclusive Collectively Exhaustive):物事を細かく要素に分解し、それぞれの要素が「漏れなく、ダブりなく」洗い出されているかを確認します。これにより、問題全体を構造的に捉え、見落としを防ぎます。
因果関係の明確化:「AだからBになる」というように、原因と結果の関係を明確にし、思考の連鎖に飛躍や矛盾がないかをチェックします。これにより、結論に至るまでの道筋が透明になります。
客観的な根拠に基づく思考:感覚や経験だけでなく、データや事実といった客観的な根拠に基づいて思考を進めます。これにより、感情や主観に流されず、誰が見ても納得できるような結論を導き出すことを目指します。
論理的な構造化:ピラミッド構造(結論を頂点に、その根拠や具体例を下層に配置する)などのフレームワークを用いて、考えを整理し、分かりやすく伝えるための構造を構築します。
なんだか余計にわからなくなってしまいましたね。コンサルティング部で実施している研修にちょうど良い課題があったので、事例をもとに考えたいと思います。
ロジカルシンキングの事例
あなたの会社では、営業車を新しく購入することになりました。検討の結果、最終的に以下の2つのモデルが候補に残りました。
ガソリン車:本体価格250万円、燃費15km/L
ハイブリッド車:本体価格300万円、燃費25km/L
この車は年間約2万km走行し、5年間使用する予定です。ガソリン代は1Lあたり160円と仮定します。あなたならどちらの車を選びますか?
はい。なかなかわかりやすい事例です。ガソリン代を加味してどちらを買った方が良いかを考えろ、ということですね。受けて立ちましょう。
ロジカルシンキングでの計算
年間のガソリン代は「年間走行距離」÷「燃費」×「ガソリン代」で出せそうです。これが5年間続くので、それぞれのガソリン代は以下になります。
- ガソリン車:約106万円
- ハイブリッド車:約64万円
これに本体価格を合わせ、5年間の使用を加味した総費用は以下になります。
- ガソリン車:約356万円
- ハイブリッド車:約364万円
ロジカルシンキングでの結論
与えられた情報を整理して考えれば、費用対効果ではガソリン車を購入する方が合理的であると考えられます。しかし、他にも考えなければならないことがあると思います。
クリティカルシンキングとは?
改めて、クリティカルシンキングで考えてみたいので、同じようにGeminiに聞いてみました。
クリティカルシンキング(批判的思考)とは、「物事の前提の正誤を検証したのち、その事象の本質を見極めていくこと」です。
これは、単に論理を組み立てるだけでなく、「そもそも、その前提は正しいのか?」「他に考えるべきことはないか?」「その情報は本当に信頼できるのか?」といった、疑いや問いを立てる思考法です。
ロジカルシンキングが「与えられた前提の中で、いかに論理的に考えるか」に焦点を当てるのに対し、クリティカルシンキングは「その前提自体が本当に正しいのか」という根源的な部分にまで踏み込んで思考を深めます。
なるほど。まさに「critical」の通り、批判的に前提を疑ってかかった方が良いようです。
クリティカルシンキングで考える
自動車の購入において、前提としていたもの以外にも以下のような要素が考えられると思います。
- 損害保険料を加味するとどうか
- ガソリン代は値段が変わるのではないか
- ハイブリッド車はガソリン車に比べて税制優遇があるのではないか
- リセールした時の金額はどうか
など、他にも考えればたくさんありそうですが、ここでは自動車重量税とリセールについて考えたいと思います。
自動車重量税は年間で1万円ほどハイブリッド車の方が安いようです。同様にハイブリッド車の方が20万円ほどリセール価格が良いようです。再度、税金とリセールまで加味した金額で考えてみます。(数字は仮定です)
- ガソリン車:250万円(本体価格)+106万円(ガソリン代)+30万円(税金)-50万円(リセール)=336万円
- ハイブリッド車:300万円(本体価格)+64万円(ガソリン代)+25万円(税金)-70万円(リセール)=319万円
このように掘り下げるとハイブリッド車を購入する方が費用対効果では合理的な結論となり、ロジカルシンキングで導き出した答えとは逆転してしまいました。
ロジカルシンキングの落とし穴
今回の例のように、目先の分かりやすい数字だけで判断してしまい、前提となる情報が不十分であると最適な結論を導き出せない可能性があります。クリティカルシンキングの視点である、「前提」や「見落とし」がないかを考えることも重要です。
どちらかだけではなく、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングを組み合わせることで、より良い答えを導き出せるはずです。
日常の業務でも
顧客から自社が提供するサービスに対してクレームが来たとします。ロジカルシンキングでは「いつ、どこで、何が」起こったかの事実確認をし、再発防止策を添えてお詫びをするのが一般的だと思います。
しかし、クリティカルシンキングを取り入れると、「先方は深刻に考えており、再発防止策の提示だけでは不足するのではないか」「他の顧客にも潜在的に発生する課題で、全社的に見直しをすべきではないか」など、目の前に起こっている事象に対する対処以外の観点も見えてくると思います。
最後に
冒頭で、普段の買い物のシーンでの質問をしました。果物を購入する場合は「旬が来たので、供給量が多くなり、全体的に安くなっているのかもしれない」や服を購入する場合は「このトップスは欲しいけど、合わせるパンツが無いから、買っても着ないかもしれない」のようにぜひ一度立ち止まって「本当にこれでいいのか?」「他に考えるべきことはないか?」と自問自答してみてください。
例えば冒頭のジムの件も、「本当に週1回通えるのか?」「仕事が繁忙期になったら?」「そもそも、運動したいだけならジム以外の選択肢は?」と自問していれば、「まずは月会費のかからない公営ジムから試してみよう」という、より後悔の少ない選択ができたかもしれません。
皆さんの後悔しない意思決定の一助になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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