ITインフラを支える「データセンター」とは(Part.1)

目次
はじめに
読者の方々は、データセンターとは何かご存知だろうか。
クラウドサービスが台頭して以降、データセンターを利用するという機会が少なくなったため、
新入社員の方々やクラウドサービスからIT業界に入った方からすると、
データセンターとはなんぞや、という方も少なくないかと思う。
今回は我々が日頃から利用しているAWS・Azureなどのクラウドサービスの裏側、
ITインフラを支えるデータセンターについて記載する。
「データセンター」とは何なのか
結論から言うと、データセンターとは各企業のサーバ・ネットワーク機器などの
情報資産を安全に保管・運用していく施設、要は建築物である。
堅牢な建物にサーバ・ネットワーク機器などを集約することにより、
可用性・信頼性・機密性・耐障害性などを向上することを目的としている。
なぜ「データセンター」を記事にしたのか
昨今、クラウドサービスの活用事例は非常に多く、
令和2年に発表された総務省の企業におけるクラウドサービスの利用動向においても、
「クラウド利用」及び「利用予定」が大きく上昇傾向となっており、
我々の業務体系からすると、非常に追い風な市場動向であると言える。
※総務省(令和2年度) 企業におけるクラウドサービスの利用動向
また、一方で「データセンター回帰」という事象も発生している。
これは「一度、クラウドサービスに移行したユーザがデータセンター利用に戻る」というパターンで
一概にクラウドサービスにのみ、メリットが存在するというわけではなく、
データセンターを利用するメリットも存在するということを示唆している。
また、クラウドサービスのデメリット(最適化が難しいこと)から、
データセンターに回帰するというパターンも存在する。
※InfoWorld 2023 could be the year of public cloud repatriation
いずれのケースであろうと、データセンターは我々の業務に欠かせない存在であり、
その内情を知ることでクラウドサービスへの理解も深まるかと考え、今回の記事を作成するに至った。
「データセンター」を利用する理由
そもそもなぜ、データセンターを利用するのだろうか。
「可用性・信頼性・機密性・耐障害性などを向上する」という目的があるのであれば、
自社でそれを担保すれば良いのではないか、と思う方もいるかと思う。
実際、通信キャリアなどは自社のデータセンターを保有している。
ただし、それはごく一部で、一般的な企業は自社で担保するという選択は取らない。
その理由はいくつか存在するが、一番は「自社の本業ではない」という点が大きいと考える。
例えば、本記事の読者は大手飲食チェーン店の企業に勤めているとする。
その場合、本業は「飲食店を繁盛させる」「美味しい飲食物を開発・提供する」などが挙げられるが、
そちらに注力する場合、「サーバ・ネットワーク機器を管理する」という本業から離れたタスクは、
必要最小限の労力で行いたい(あるいは外部に任せたい)ということになる。
そこで出てくる選択肢が、データセンターやクラウドサービスなのだ。
これらのサービスを利用することで「サーバ・ネットワーク機器を管理する」という、
本業から離れた、手放したいタスクを一括で請け負ってもらいつつ、
「可用性・信頼性・機密性・耐障害性などを向上する」という付加価値を享受するのである。
では、どのような企業がデータセンターを提供するのだろうか。
それは「自社の本業」とシナジーがある企業が行うことが多い。
例えば、前述のような通信キャリア(通信の付加価値を提供)であったり、
電力会社(電気周りの付加価値を提供)などのインフラ面の設備が充実した企業である。
「データセンター」の特徴
データセンターの特徴にはどのようなものが存在するのか。
以下にコンピューターシステムの品質を評価する際に用いられる指標であるRASISをベースに列挙する。
※RASISの一覧
・Reliability(信頼性):平均故障時間(時間、分)で評価
・Availability(可用性):稼働率(%)で評価
・Serviceability(保守性):平均復旧間隔(時間、分)で評価
・Integrity(保全性):データの破壊・改ざんの起こりにくさで評価
・Security(機密性):セキュリティの強度で評価
特徴 | RASIS | 具体例 |
---|---|---|
コストメリット | - | 自社で情報機器を扱わなくて良い 運用費用(人件費)削減 クラウドの場合、初期コスト削減 |
災害対策 | 信頼性、可用性、保守性 | 地震・水害に強い立地 安定した電力供給 専用の通信回線 |
高セキュリティ | 保全性、機密性 | 承認された人しか入れない建物 自身の機器以外へのアクセス制限 機器搬入出時の確認 |
サポート | 信頼性、保守性 | 24h365d運用体制 機器障害時サポート |
特徴1:コストメリット
一つ目の特徴であるコストメリットについて、コストメリットの一覧を記載する。
要素 | コストメリット |
---|---|
設備 | 自社サーバルームを用意する必要がない |
人 | 情報系スキルを持つ要員の育成が不要 |
電力 | 電気代、空調コストなどの削減 |
セキュリティ | 自社で用意する必要がない |
自社に専用のサーバルームを用意するとなると、
全てを一から調達する必要があるため、莫大なコストが発生する。
特徴2:災害対策
二つ目の特徴である災害対策について、発生しやすいリスクとデータセンターにおける対策を記載する。
リスク | データセンターにおける対策 |
---|---|
地震 | 耐震・免震構造の建物 |
水害 | 津波や液状化に影響されない立地 |
停電 | 無停電電源装置(UPS)、非常用発電機 |
通信途絶 | 回線の冗長化 |
想定されうる災害(南海トラフ巨大地震)に関しては、
内閣府の防災情報のページや各都道府県のハザードマップを参考にすると良い。
※内閣府防災情報ページ
※東京都建設局ハザードマップ
特徴3:セキュリティ
三つ目の特徴であるセキュリティについて、一覧を記載する。
要素 | セキュリティ |
---|---|
データセンター入館 | 入館申請・警備員確認・入場ゲート |
サーバルーム入室 | IDカード確認・生体認証・機器持込確認 |
サーバラック | データセンター要員による開錠・施錠 |
不審な動き(覗き見など) | 監視カメラによる監視 |
一般的に提供されているセキュリティについては上述のようなものがあるが、
その他、データセンターによって他の設備が導入されていることもある。
特徴4:サポート
四つ目の特徴であるサポートについて、基本的には追加契約となるが、
以下のような項目が存在する。
・オペレーター常駐(手順書に従った作業、機器故障時のベンダー対応立ち合いなど)
・システムエンジニア常駐(障害時の切り分け対応、機器交換対応など)
・監視システムの提供(データセンター監視機器から各機器への監視など)
最後に
Part.1では、データセンター入門編として、データセンターに関する基礎知識やメリット、
各特徴における基本的な設備などを紹介した。
Part.2では、より深く知りたい方向けに、具体的な設備やデータセンターの指標、
どのような運用上の工夫がされているかを紹介する予定である。
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