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SAP × AIで「コンフィグ差分チェック」を自動化してみた

作成者: kosuke.nagano|2026年06月25日

はじめに

SAPプロジェクトに携わっている方なら、こんな経験はないでしょうか。SPROの設定値をエクスポートして、Config定義書と突き合わせる。VLOOKUPやINDEX MATCHを駆使して、ひたすらセルを見比べる。列名が微妙に違っていて関数がうまくハマらず、結局手作業で調整する――。

私たちもまさにその現場にいます。だからこそ、「この作業、AIでもうちょっとラクにならないか?」と考えました。

今回は難易度の低いところから始めてみようということで、最初のPoCとして「SAPコンフィグ差分チェックツール」を開発しました。本記事では、開発の背景からツールの仕組み、AI活用のポイント、そして今後の展望までをお伝えします。

開発の背景

現場が抱えていた課題

SAPプロジェクトにおけるコンフィグ管理では、SAPの設定値とConfig定義書をExcel上で関数を使って突合するケースが多くあります。しかし、この方法にもいくつかの限界がありました。

  • 突合作業の工数:Excel関数による突合でも、事前に列の対応関係を手動で合わせたり、関数を組み替えたりする作業が発生し、1コンフィグあたり相応の時間を要します。
  • ヒューマンエラーのリスク:関数の設定ミスや参照範囲のズレなど、Excel特有のエラーが混入しやすく、結果の信頼性を担保するにはダブルチェックが欠かせません。
  • フォーマットの不統一:プロジェクトやチームによって定義書のフォーマットが異なるため、同じExcel関数やマクロを使い回すことが困難でした。突合のたびにシートの構成に合わせた調整が必要になります。

SAP × AI で解決できるのではないか

こうした課題に対し、「AIにフォーマットの違いを吸収させ、意味的な突合を行わせる」というアプローチが有効ではないかと考えました。単純な文字列マッチングではなく、AIが項目の意味を理解したうえで差分を検出できれば、フォーマットの違いに左右されない柔軟な突合が実現できます。

ツールの機能紹介

全体の操作フロー

ツールの操作はシンプルな2ステップ構成になっています。


ステップ1:ペア登録

「ペア登録」画面では、比較したいファイルのペアを登録します。

  • SAP実機ファイル(SPROの設定をエクスポートしたExcel)をドラッグ&ドロップ
  • Config定義書ファイル(設計時に作成したExcel)をドラッグ&ドロップ
  • 必要に応じて登録するペアにラベルを付与(例:StorageTypes)

複数のペアを一度に登録できるため、複数テーブルの一括チェックにも対応しています。実際に下のスクリーンショットのように、2つのペアを登録して同時に分析を実行することが可能です。登録が完了したら「分析実行」ボタンを押すだけです。

正直なところ、SAPからファイルを手でダウンロードしてくる時点で「それも自動化してくれよ」という声が聞こえてきそうです。将来的にはAPI連携で自動取得することも考えられますが、今回はあくまでPoCなので、そこは潔く割り切りました。まずは「突合作業そのもの」をAIで効率化できるかの検証に集中しています。


ステップ2:結果確認

分析が完了すると、まず結果一覧画面が表示されます。登録したペアごとに一致率と不一致行数が一目で確認でき、「不一致のみ表示」トグルで差分のあるペアだけに絞り込むこともできます。

一覧からペアを選択すると、詳細画面に遷移します。詳細画面では以下の情報が確認できます。

  • サマリーカード:一致率(例:93%、52/56行)、不一致行数、SAP実機のみに存在する行数、Config定義書のみに存在する行数を4つのカードで俯瞰できます
  • 列マッピング:SAP実機の列名とConfig定義書の列名の対応関係を自動で推定した結果を確認できます
  • 差分詳細:差分のある行をハイライト表示。SAP実機側とConfig定義書側のどちらに差異があるかがバッジで視覚的に区別されます

AI活用のポイント

現時点でAIを活用しているのは、列マッピングの自動推定です。


列マッピングの自動推定

SAP実機ファイルとConfig定義書では、同じ設定項目でも列名が異なることが一般的です。たとえば、SAP側では「Warehouse Number」、定義書側では「WhN」と略記されているケースなどです。AIが列名の意味を解釈し、対応関係を自動でマッピングすることで、手動での列合わせ作業を不要にしました。

さらに、各マッピングに対して確信度その根拠を出力するようにしています。たとえば「Warehouse Number ↔ WhN」であれば確信度100%で「WhNはWarehouse Numberの一般的なSAP略称である」という根拠が、「HU Type Check ↔ HU」であれば確信度75%で「HUはHandling Unitを表すことが多く、HU Type Checkの略称と考えられる」という根拠が添えられます。マッピング結果の妥当性を人が素早く判断でき、確信度が低い項目だけを重点的にレビューすればよいので、確認作業の効率も大きく向上します。

今後の展望

このツールの進化

現在のPoCで得られたフィードバックをもとに、以下の機能拡充を計画しています。

  • 対応フォーマットの拡充:現在はExcel形式を中心に対応していますが、今後はより多くのファイル形式への対応を進めます
  • 分析結果のエクスポート:差分チェックの結果をファイルとして出力し、チーム内での共有やエビデンス管理に活用できるようにします

SAP × AI の次なるPoC

コンフィグ差分チェックは、私たちが取り組む「SAP × AI」の最初の一歩です。今後は以下のような領域にもAI活用を広げていく予定です。

  • Config定義書間の整合性チェック:複数のConfig定義書同士を突き合わせ、定義書間の矛盾や不整合をAIが検出するツールを構想しています。実機との比較だけでなく、設計段階での品質向上を目指します。
  • テスト自動化ツール:SAPのテスト工程にAIを組み込み、テストケースの生成や実行の効率化に取り組む予定です。

SAPの業務領域には、まだまだAIで効率化・高度化できる余地が多く残されています。引き続き、現場の課題に寄り添いながらPoCを重ね、実用化を目指していきます。

さいごに

SAPプロジェクトにおけるコンフィグ管理は、地味ながらも品質を左右する重要な工程です。今回のPoCを通じて、AIが人の判断を支援するかたちで、確実に業務効率と品質を向上できる手応えを得ました。

実は、この記事自体もAIと一緒に作成しています。かなり自然な表現だったと思いますが、いかがでしたでしょうか?AI、なかなかやりますよね。

今後もSAP × AIの取り組みを発信していきますので、ぜひご注目ください。