こんにちは!クラウドインテグレーション部の上野と中島です。 本記事ではMicrosoft Azureでも代表的なファイル共有サービスであるAzure FilesとAzure NetApp Filesの特徴を比較し、それぞれのユースケースにおいてどのような場面で最適な選択となるのかを解説していきます。
近年、オンプレミスファイルサーバーをクラウドへ移行する流れが加速しています。しかし、一口に「ファイルストレージ」といっても、用途や性能、求められる可用性によって最適なサービスは大きく異なります。 Microsoft Azureが提供する複数のストレージサービスの中でも、特に「ファイル共有」に特化したサービスがAzure FilesとAzure NetApp Filesの2つです。
この2つはどちらもフルマネージドサービスでありながら、性能や機能、価格帯が大きく異なるため、選定に迷うケースが少なくありません。 そこで本記事では、性能・コスト・ユースケースといった観点から、Azure FilesとAzure NetApp Filesの比較を行います。
Azure FilesはMicrosoft社が提供するフルマネージドのファイル共有サービスです。 オンプレミスのファイルサーバーやNASと同様のファイル共有機能をクラウド上で提供しており、SMBやNFSを使用して、クライアントコンピューターやクラウド上の仮想マシンからアクセスできます。
Azure NetApp FilesはMicrosoft AzureとNetApp社が共同で提供するフルマネージドかつ高可用性なNASサービスです。 ONTAPストレージOSをAzureデータセンター内のベアメタルインフラストラクチャで稼働させることにより、低遅延と高スループットを実現しています。通常は移行が困難とされる大規模環境のワークロードにも対応できる、高度なデータ管理機能を提供します。
※SMBマルチチャネルは、SMB 3.0プロトコルの一部であり、複数のネットワーク接続を同時に利用することで、ファイル転送の速度向上と信頼性の確保を行う技術です。
どちらのサービスもSMBとNFSをサポートしていますが、Azure NetApp Filesではデュアルプロトコルに対応しているため、 Windows/Linuxの混在環境にも対応可能です。
※デュアルプロトコルは、1つのAzure NetApp Filesボリュームに対して、WindowsクライアントはSMBを、Linux/UNIXクライアントはNFSを使用して、データに同時アクセスできる機能です。
Azure Filesの冗長性の最高レベルであるGZRS(Geo-Zone冗長ストレージ)は、プライマリリージョンでZRS(ゾーン冗長ストレージ)を使って可用性ゾーン間で同期レプリケーションし、さらにセカンダリリージョンへ非同期にLRS(ローカル冗長ストレージ)でレプリケーションする構成です。これにより非常に高い冗長性が保証されています。
一方、Azure NetApp FilesはAzure StorageのようにZRSやGZRSといった自動冗長化オプションを備えていません。Azure NetApp Filesのボリュームはゾーン配置を設定した場合、特定の1つの可用性ゾーンに配置されるため、単一のゾーン障害が発生するとボリュームに影響が及びます。 そのため、ゾーン障害やリージョン障害に備えるには、Azure NetApp Filesのレプリケーション機能であるCZR(クロスゾーンレプリケーション)によるゾーン間レプリケーション、またはCRR(クロスリージョンレプリケーション)によるリージョン間レプリケーションを構築し、データ保護を行う必要があります。
※CZR:同一リージョン内の異なる可用性ゾーンへボリュームを非同期レプリケーションする仕組みで、ゾーン障害に対する保護を実現します。 ※CRR:異なるリージョンへボリュームを非同期レプリケーションする機能で、リージョン障害からの保護を実現します。
Azure NetApp Filesはエンタープライズクラスの高性能ワークロード向けに設計されており、極めて高いスループットと低遅延を提供しています。そのため、大規模なファイルシステムや高負荷なワークロードにはAzure NetApp Filesが向いています。
そもそも、これら2つのサービスは料金体系が異なる(Azure Filesは従量課金であるのに対し、Azure NetApp Filesは容量プールに対して課金される)ため、正確な比較は難しいですが、今回の比較では状況を絞ったコスト比較を行います。
以下では、2つのケースを用いてコスト比較を行います。
<Azure Files>
<Azure NetApp Files>
<Azure Files>
<Azure NetApp Files>
ケースAのように「コスト優先で標準的なパフォーマンス」を求める場合は、Azure Filesが有利です。これは、Azure FilesのHDD階層が非常に安価であり、小規模な利用であればIOPSやスループットの無料枠内に収まるため、月額費用を最小限に抑えられるためです。そのため、速度を求めないケースでは最適な選択肢となります。
一方でケースBのような「高いパフォーマンス」を求める場合は、Azure NetApp Filesの方がコストパフォーマンスに優れる結果となりました。Azure Filesで高い性能を確保しようとすると、ストレージ単価に加えて「トランザクション費用」や「帯域幅費用」が積み重なり、合計金額が膨れ上がってしまいます。対してAzure NetApp Filesは、容量プールの料金にスループット保証が含まれており追加のトランザクション費用がかからないため、結果的に安価に抑えることが可能です。
基幹システムや高性能を要求するアプリケーションで低レイテンシが必要な場合は、Azure NetApp Filesが推奨されます。 一方、一般的な業務ファイル共有であれば高いスループットなどは求められないため、Azure Filesで十分であると考えられます。
Azure NetApp Filesはデュアルプロトコルに対応しているため、Windows/Linuxなどの混在環境における利用では、Azure NetApp Filesが優先されます。
Azure FilesはAzure File Syncを利用することで、オンプレミスのWindowsサーバーとの双方向同期が可能です。既存サーバーをキャッシュとして活用しながら段階的にクラウドへ移行できるため、段階移行や既存サーバーとの並行利用が必要な場合にはAzure Filesがおすすめです。
対して、Azure NetApp FilesはSnapMirrorなどの高度な転送機能に対応しており、大容量データでも極めて高速に移行できます。短期間での大量データ移行や高い性能要件が求められる場合におすすめです。
※Azure File Syncは、オンプレミス(自社内)のWindowsファイルサーバーと、クラウドのAzure Filesを同期させるハイブリッドファイル共有サービスです。
先述の通り、Azure Filesでは最高レベルの冗長性としてGZRSが提供されています。なお、GZRSは年間99.99999999999999 %(9が16個)以上のオブジェクト持続性を提供するように設計されているため、最高レベルを求める場合では、GZRSを提供するAzure Filesが適しています。
上記の比較を踏まえ、Azure FilesとAzure NetApp Filesの最適なユースケースは以下のようになると考えます。
Azure NetApp Filesは、エンタープライズクラスの高性能ワークロード向けに設計されており、極めて高いIOPSと低遅延を提供します。特に、Windows/Linuxが混在する大規模環境においては、デュアルプロトコルに対応したAzure NetApp Filesが有力な選択肢となります。 一方、Azure Filesは、コスト効率に優れており、HDD TierやStandard Tierを選択することで低コストなファイル共有が可能です。さらに、ゾーン冗長およびリージョン冗長が可能なGZRSを提供しており、冗長性を最優先する場合にも適しています。
お客様のユースケースに合わせて、求められる性能は変わっていきます。本記事が、最適なサービスの選定に役立てば幸いです。
Azure Filesは、Azure File Syncに対応している点が大きな強みです。これは、オンプレミスのファイルサーバーとクラウドを統合したいというニーズにおいて、非常に優れた解決策となります。 弊社では、お客様のAzure Files導入や、それに伴うハイブリッドクラウド環境の設計・構築を強力に支援するパッケージを提供しております。
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