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ウィンドウ関数を使ってみよう!〜GROUP BYとの違いから累積計算・ランキングまで〜

作成者: tatsuya.sugano|2025年10月07日

こんにちは!
9月入社、デジタルエンジニアリング部 SE課 4G 菅野です。
今回はSQLの中でも知っていると得するかもしれない「ウィンドウ関数」についてのテックブログです。
ちょっと難しそう...と思うかもしれませんが、累積計算やランキングなどに役立つ便利な関数です。
ウィンドウ関数を学んで、SQLの楽しみを広げましょう!

対象読者

  • SQLの基本的な構文はわかったぞ!という方
  • ウィンドウ関数を使ったことがない方
  • ウィンドウ関数の使い方を知りたい方

パーティションとは

ウィンドウ関数の中でよく出てくるのが、PARTITION BY です。
これは「データをどの単位で区切って集計するか」を指定するものです。

例:

  • PARTITION BY store_name
    → 店舗ごとに区切って、各店舗ごとに累積やランキングを計算する

  • PARTITION BY product_name
    → 商品ごとに区切って、商品の売上推移を分析する

「パーティション=分析単位のグループ」と考えるとわかりやすいと思います!

「GROUP BY」と「PARTITION BY」の違いについて

ウィンドウ関数に入る前に、まずは「GROUP BY」と「PARTITION BY」の違いを整理します。
両者とも「指定の区分ごとにレコードをまとめる」という点では共通していますが、そのまとめ方が異なります。

  • GROUP BY
    → 区分ごとに集約し、結果は「1行にまとめられる」

  • PARTITION BY
    → 区分ごとにグループ化するが、行は保持したままで、それぞれの行に対して集計結果を付与できる

つまり、

  • GROUP BY → 「合計だけ見たいとき」
  • PARTITION BY → 「合計を見つつ、行ごとの詳細も残したいとき」 という使い分けになります。


ざっくり図解

GROUP BYがAとBのレコードをそれぞれまとめにしてしまうのに対し、PARTITION BYはAとBを別々に認識しつつ、各行は認識できる状態です。

※画像:菅野作成

ウィンドウ関数とは

ウィンドウ関数は、PARTITION BYを利用して、レコードをパーティションで区切りつつ、各レコードを認識している状態で集計処理することができます。

パーティションとは、ウィンドウ関数を適用する際に、どの範囲のデータに対して計算を行うかを指定するために使われます。
for文でカーソルを当てながら処理していくイメージで良いと思います。

ウィンドウ関数を使うことにより、累積計算や移動平均、ランキングをつけたりなどが容易に行えるようになります。

ウィンドウ関数でよく使う関数の紹介

  • 移動平均・統計
    • SUM():パーティション内で累計を計算する
    • AVG():移動平均や全体平均
    • MAX() / MIN():パーティション内での最大値、最小値
  • 集計
    • ROW_NUMBER():パーティション内で行に連番を振る(重複なし)
    • RANK():順位を振る(同順位があれば次の順位が飛ぶ)
    • DENSE_RANK():順位を振る(同順位があっても順位が飛ばない)

 

ウィンドウ関数の注意点

便利なウィンドウ関数ですが、大きなデータを扱うときは注意も必要です。

  1. ソート処理が必須になることが多い
    • ORDER BYを伴うウィンドウ関数はパーティションごとにソートされる
    • 特にパーティションごとに合計を出す「SUM(…) OVER(PARTITON BY … ORDER BY …)」やパーティションごとのランキングを出す「RANK()」は、ソートが計算コストの中心になる
    • データ件数が多くなると、ソートがボトルネックになりやすい
    • → ソート対象の列にインデックスを貼ると改善できる
  2. パーティション分割数が多いと重くなる
    • PARTITION BYは「区切りごとに処理を独立して実行」するため、区切りの数が多いとその分時間がかかる
    • → 事前に集約した一時テーブルを作ると改善できる
  3. フレーム指定(ROWSやRANGE)は慎重に
    • ROWS BETWEEN UNBOUNDED PRECEDING AND CURRENT ROWは累積処理には便利だが、広範囲になると処理が重くなる
    • どうしても必要な場合は、フレームの範囲を小さくする(例:移動平均ならROWS 2 PRECEDING程度にしておくなど)
  4. メモリ消費に注意
    • ウィンドウ関数は「パーティション単位での結果セットを一時的に保持」することが多い
    • 特にRANKのようなソート+保持はメモリ消費量が大きい
    • 対策としては、大規模なデータは、一気に処理せず期間ごとに分けて実行するなどできる(例:月ごと、店舗ごと)

サンプルクエリの紹介

サンプル:売上を管理するテーブルを想定

CREATE TABLE Sales (
store_name VARCHAR(100) NOT NULL,
product_name VARCHAR(100) NOT NULL,
amount INT NOT NULL,
sale_date DATE NOT NULL
);

INSERT INTO Sales (store_name, product_name, amount, sale_date)
VALUES
('Tokyo', 'Apples', 1200, '2024-10-01'),
('Tokyo', 'Bananas', 800, '2024-10-03'),
('Tokyo', 'Oranges', 1500, '2024-10-05'),
('Osaka', 'Apples', 600, '2024-10-02'),
('Osaka', 'Bananas', 700, '2024-10-03'),
('Osaka', 'Oranges', 900, '2024-10-06'),
('Osaka', 'Apples', 1000, '2024-10-08');

 

GROUP BYで店舗ごとに合計を求める

SELECT store_name, 
SUM(amount) AS total_sales
FROM Sales
GROUP BY store_name;
store_name total_sales
Osaka 3200
Tokyo 3500

 

店舗ごとの累積売上を見たい!

例:店舗ごとに日付順に並べて、その時点までの累積売上を出す

SELECT store_name, 
sale_date,
amount AS daily_sales,
SUM(amount) OVER(PARTITION BY store_name ORDER BY sale_date) AS cum_sales
FROM Sales;
store_name sale_date daily_sales cum_sales
Osaka 2024-10-02 600 600
Osaka 2024-10-03 700 1300
Osaka 2024-10-06 900 2200
Osaka 2024-10-08 1000 3200
Tokyo 2024-10-01 1200 1200
Tokyo 2024-10-03 800 2000
Tokyo 2024-10-05 1500 3500

 

店舗ごとの商品売上ランキングを出したい!

SELECT store_name, 
product_name,
amount,
RANK() OVER(PARTITION BY store_name ORDER BY amount DESC) AS ranking
FROM Sales;

RANK()はランキング付けすることができる関数

store_name product_name amount ranking
Osaka Apples 1000 1
Osaka Oranges 900 2
Osaka Bananas 700 3
Osaka Apples 600 4
Tokyo Oranges 1500 1
Tokyo Apples 1200 2
Tokyo Bananas 800 3

 

店舗ごとの商品の売上割合を見たい!

SELECT store_name, 
product_name,
amount,
ROUND(
amount * 100.0 / SUM(amount) OVER(PARTITION BY store_name), 2
) AS sales_ratio
FROM Sales;
store_name product_name amount sales_ratio
Osaka Apples 600 18.75
Osaka Bananas 700 21.88
Osaka Oranges 900 28.13
Osaka Apples 1000 31.25
Tokyo Apples 1200 34.29
Tokyo Bananas 800 22.86
Tokyo Oranges 1500 42.86

 

短期的なトレンドを追いたい!

「ROWS BETWEEN 2 PRECEDING AND CURRENT ROW」で前2行と今の行を処理することを示しています。

SELECT store_name,
sale_date,
amount AS daily_sales,
ROUND(
AVG(amount) OVER(
PARTITION BY store_name
ORDER BY sale_date
ROWS BETWEEN 2 PRECEDING AND CURRENT ROW
), 2
) AS moving_avg
FROM Sales;
store_name sale_date daily_sales moving_avg
Osaka 2024-10-02 600 600.00
Osaka 2024-10-03 700 650.00
Osaka 2024-10-06 900 733.33
Osaka 2024-10-08 1000 866.67
Tokyo 2024-10-01 12000 1200.00
Tokyo 2024-10-03 800 1000.00
Tokyo 2024-10-05 1500 1166.67

まとめ

今回の記事では、ウィンドウ関数を通して以下のポイントを学びました。

  1. GROUP BYとPARTITION BYの違い

    • GROUP BY → グループごとに1行にまとめて集計する

    • PARTITION BY → グループごとに区切りつつ、行を保持したまま集計結果を付与できる

      → 「全体をまとめたいのか、それとも行を残したまま分析したいのか」で使い分ける

  2. ウィンドウ関数でできること

    • 累積計算(累積売上の推移を確認)
    • ランキング(店舗ごとの売上順位を付与)
    • 割合計算(全体に対する各行の割合を算出)
    • 移動平均(短期的なトレンドを把握)
    • 差分計算(前日比・成長率なども可能)
  3. パフォーマンスの注意点

    • ソート処理やパーティション分割が重くなりやすい
    • インデックスの利用やフレーム範囲の工夫で最適化できる
    • 大規模データでは一時テーブルや期間分割で対応する

GROUP BYが「まとめて終わり」なら、PARTITION BYを使ったウィンドウ関数は「まとめつつ分析を続けられる」強力なツールです。

ちょっと気味が悪かったOVER(…)の構文も、
「区切る(PARTITION)」「並べる(ORDER)」「カーソルで処理する(OVER)」という流れを意識すれば自然に理解できます。

SQLをデータ抽出だけで終わらせず、分析や可視化する集計を深めたいときにぜひ使ってみてください!

参考文献

『達人に学ぶSQL徹底指南書』

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!!