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AWS Jr.Champions 受賞者を称えるMVを生成AIで制作しました

作成者: arisa.kojima|2025年08月22日

はじめに

こんにちは。25卒、デジタルインキュベーション部デジタルインキュベーション1課の小島愛梨紗です。
私は2025年7月4日に開催されたアジアクエストの全社会に向けて、MV『You are Jr.Champions!』の制作プロジェクトにメンバーの一員として参加しました。
AIを使ってMV制作をするという本プロジェクトは、桃井社長の、2025 Japan AWS Jr. Champions、2025 Japan All AWS Certifications Engineersの受賞者の方々を讃えるような動画を作りたい、という想いから生まれました。

プロジェクトメンバー:

  • 制作:桃井 純 、細田和幸、古座谷健二、小島愛梨紗
  • 協力:宮㟢祐磨

使用ツール:

  • 作詞:ChatGPT
  • 作曲:Suno AI
  • 動画:Veo 3(Veo 2), Midjourney V1, Sora

今回の記事では、この動画を作成するにあたって使用したAIを二つほどご紹介したいと思います。
(2025年7月4日時点の情報)

使用したAI

Suno AIとは

Suno AIとは楽曲を自動生成できる音楽制作サービスです。
このサービスでは歌詞を入れるだけで簡単に曲を生成することができます。
生成の際には、好きな曲のジャンルをプロンプトとして指定することが可能です。
例えば、K-pop、ボカロ、ヒップホップなど様々なジャンルに対応しております。
また、記述式なので自由度は非常に高くなっており、テンポは速めにする、明るい雰囲気にする、ピアノを使うなど、細かく指定することもできます。
日本語対応なのでプロンプト指定の際、英語に悩まされることもありません。
無料版でも1日に50クレジットを付与されるため、気軽に試すことができます。
1回の生成につき10クレジット使用し、2曲できあがるので、1日に合計10曲生成可能です。
ただし、無料版では商用利用はできませんので、商用利用を考えている場合は有料版にする必要があります。

公式サイト:SunoAI

SunoAIの料金は以下の通りです。

  • Basic Plan – FREE
    • 1日50クレジットを付与(10曲分)
    • 商用利用不可
    • 追加のクレジット購入不可
    • 混んでいるときは生成に時間がかかる
    • 2曲まで同時に生成可能
  • Pro Plan – 10ドル/月(年払い:8ドル)
    • 1ヶ月2,500クレジット (500曲分)
    • 商用利用可
    • 追加のクレジット購入可
    • 優先的に生成
    • 10曲まで同時に生成可能
  • Premier Plan – 30ドル/月(年払い:24ドル)
    • 1ヶ月10,000クレジット (2,000曲分)
    • 商用利用可
    • 追加のクレジット購入可
    • 優先的に生成
    • 10曲まで同時に生成可能

引用元:楽曲生成AI「Suno AI」の料金プランとライセンスについて

今回作った歌詞はAWSの専門用語が多く使われていたため、発音が不明瞭であったり間違ったりしている箇所がありました。
SunoAIには、歌詞を上手く発音できない場合があり、特に固有名詞は発音できない場合が多いです。この辺りは歌詞を全てひらがなにするなど少し工夫が必要かもしれません。

Veoとは

VeoはGoogleが提供している生成AIで、テキストや画像から動画を生成することができます。
生成された動画の品質は高く、画像から人を動かす際にも細部に多少の違和感はありますが、気にならない程度には自然な動きを再現してくれます。
Veoは日本語でもある程度生成は可能ですが、英語でプロンプトを書くことで、より正確かつ自然な動画を生成できる印象でした。
英語のプロンプトを考えるのが難しいと感じた時には、GeminiやChatGPTに助けを借りていました。
生成される動画の長さは8秒程度と短いので今回の場合、それらを繋ぎ合わせてMVを完成させました。

Veo2とVeo3の比較

モデル名 発表日 ソース取り込み形式 メリット デメリット
Veo2 2024年12月 テキストから動画 画像から動画 生成した動画を引き伸ばすことができる 無料で使える クレジット数は少ない
Veo3 2025年5月 テキストから動画 画像から動画(ベータ版) オーディオ生成(ベータ版) 動きが多い動画を生成可能 有料(Google Studio Ultra)でしか使えない

公式サイト:Google AI Studio
公式サイト:Veo

料金

  • Google AI Pro

    • 2900円/月(初月無料)
    • 毎月1000クレジットが付与される
  • Google AI Ultra

    • 18,000円/月
    • 毎月12500クレジットが付与される
    • Veo3を使用できる

Google AI Ultraに加入すると以下の全てのバージョンから選ぶことができるようになります。
また、使用するバージョンによって使用クレジット数が変わります。

Veo2 - Fast(10クレジット)
Veo3 - Fast(text to video) (20クレジット)
Veo2 - Quality (100クレジット)
Veo3 - Quality (100クレジット)

一回の生成につき、1〜4個の中から生成する動画の数を選べます。その場合も消費するクレジット数は変わりません。
私は主にVeo3を使って作業を行いましたが、 Veo2と比較してかなり進化を感じました。
具体的には、 Veo2に『画像にいる人々を踊らせて』というプロンプトを入力した場合、 Veo2ではプレゼンテーションの時のように軽く身振り手振りをする程度のものが生成されることが多かったのですが、 Veo3ではちゃんとプロンプト通りに踊ってくれることが多いという印象です。
しかし、 Veo3にはない Veo2の利点としては動画の引き伸ばしが可能という点です。
どちらも8秒程度の短い動画しか生成できないため、 曲の尺に合わないことがありました。
そういった場合に Veo2で引き伸ばせる機能には助けられました。
ただし、Veo3の動画を Veo2に取り込んで続きを生成するというやり方を取ると、上記のとおり、動画のクオリティが変わってしまうので、そこが少し難しいところでした。

『You are Jr.Champions!』完成までの作業フロー

まず、桃井社長がChatGPTを使用して曲の作詞を行い、その歌詞をSuno AIに入力して楽曲を生成しました。次に、細田さん、古座谷さん、私を含めた3人で各々動画生成を行いました。最後に、AIで生成された動画を厳選し、私が動画編集を行いました。

AI生成は、良い結果が得られるまで続けるプロセスであり、まるでソーシャルゲームの“ガチャ”のような体験でした。特に、生成された歌詞や曲に合う動画を作成するのは難しく、多くの時間と労力を要しました。

AI生成の要であるプロンプトについて

今回私は何度かAIを使っているうちに、プロンプトの違いが生成物のクオリティに明確な影響を及ぼすことを実感しました。
私はこれまで、良さそうな単語をただ並べただけのプロンプトで動画生成を試みていましたが、その方法では期待通りの動画を生成できませんでした。
しかし、動画生成チームの一員である古座谷さんから教えていただいたプロンプトを使用すると、今まで試行錯誤を重ねてもうまく動かなかった生成過程が、初めて思い通りに進みました。

以下、プロンプトの例です。

-ダンスシーンのプロンプト例

良さそうな単語をただ並べただけのプロンプト:
cool dynamic choreography dance

思い通りに動いたプロンプト:
synchronized hip-hop dance routine with powerful footwork and body isolations. Urban rooftop at night, cinematic lighting and camera tracking each dancer in motion.

前者のプロンプトでは、少し手を動かす程度の動きしか生成されませんでしたが、後者のプロンプトでは全身をしっかりと動かしてくれました。明確に何が影響を及ぼしたのかを断定することは難しいですが、おそらく情報量を増やすことが鍵であると思われます。入力したプロンプトがAIによってすべて反映されることは稀です。そのため、たとえばダンスの要素を強調したい場合には、“hip-hop dance”や“footwork”、“body isolation”、“dancer”といった関連語を複数入れることで、反映される確率を上げられるのではないかと思いました。
また、GeminiやChatGPTにプロンプトの生成を手伝ってもらった際には、単語の羅列ではなくまとまった文章が返ってきたことから、AIにとっては単語よりも文章で構成されたプロンプトの方が、意図を正確に解釈しやすいと感じました。

この経験から、プロンプトを適切に考える能力がAIを効果的に使いこなすための鍵であると感じました。この気づきによって、自分がまだAIを完全には使いこなせていないこと、そして知識がまだ十分ではないことを認識させられる瞬間となりました。
今後はプロンプト設計をより重視し、AIを活用できるスキルをさらに高めていきたいと思います。

スペシャルサンクス

今年AWS関連で受賞された方々について紹介いたします。
今回、動画生成の際にお写真を使用させていただきました。
改めて、受賞おめでとうございます。

■ 2025 Japan AWS Jr. Champions

矢内碧人 クラウドインテグレーション部
足立和生 デジタルイノベーション部

■ 2025 Japan All AWS Certifications Engineers

井川朋樹 クラウドインテグレーション部
池口翔平 クラウドインテグレーション部
今村俊輝 クラウドインテグレーション部
沖本眞一 クラウドインテグレーション部
川井康敬 クラウドインテグレーション部
中道亮汰 クラウドインテグレーション部
矢内碧人 クラウドインテグレーション部
秋山直輝 クラウドインテグレーション部
林田和弥 デジタルエンジニアリング部
向井剛志 デジタルエンジニアリング部
満田竜輔 デジタルエンジニアリング部
松葉 岳 デジタルエンジニアリング部
鈴木利明 デジタルイノベーション部
足立和生 デジタルイノベーション部

■ 2024 Japan AWS Jr. Champions

井川朋樹 クラウドインテグレーション部
髙橋 建  クラウドインテグレーション部

■ 2023 Japan AWS Jr. Champions

宮島航平 クラウドインテグレーション部
渡邊 毅  クラウドインテグレーション部

最後に

AIを使ったミュージックビデオ制作は、まさに挑戦の連続でした。
何度も試行錯誤を繰り返し、膨大な生成物の中から最適なものを選び出すプロセスは、時間も労力も要するものでした。

しかし、完成したMVが多くの方々から「すごく良かった!」と絶賛され、制作方法について尋ねられる機会も多かったことが、何よりの喜びです。私たちの努力が形となり、高く評価されたことに心から達成感を感じています。

このプロジェクトを通じて、AIという分野が多くの人の興味を引きつける良いきっかけになったと感じています。
単なる機能的な側面だけでなく、人の心を動かすものづくりができたという手応えは、非常に大きなものでした。
また、アンテナを張っていなければ出会えなかったAIサイトに触れ、まだ私たちが知らない素晴らしいAI技術が数多く存在すること、そしてこれからも続々と誕生することを考えると、とてもワクワクしました。

AIの発展は目覚ましく、今後はさらにリアルな動画生成AIが登場するでしょう。
それを心待ちにしながら、皆さんが充実したAIライフを満喫できることを願っています。