サービスデザイン課の花井です。
今回は、プレゼンテーション資料をブラッシュアップする方法についてお伝えします。
「きれいな資料を作るにはセンスやデザインの知識が必要だ」とよく耳にしますが、実は、ちょっとした工夫で資料を改善できます。
今回は、デザイン4原則を例に挙げ、どのように資料のブラッシュアップに役立つかをご紹介します。
資料を作成中の方は、ぜひ実際に当てはめながら読み進めてください。
デザイン4原則は、視覚的に効果的なレイアウトや構成を作るための基本的なルールです。
この原則は、ロビン・ウィリアムズの著書『ノンデザイナーズ・デザインブック』で紹介され、以下の4つの要素から成り立っています。
ノンデザイナーズ・デザインブック 公式サイト
近接(Proximity)
関連する要素をまとめて配置し、関連性のない要素は離して配置します。これにより、情報のグループ化が明確になり、視覚的に整理されたレイアウトを実現します。
整列(Alignment)
デザイン内のすべての要素を何らかの基準に沿って整列させることで、統一感と視覚的なバランスを保ちます。
反復(Repetition)
デザイン全体で一貫した要素(色、フォント、スタイル、レイアウト)を繰り返すことで、統一感と一貫性を持たせます。これにより、デザインがまとまり、視覚的に安定感が生まれます。
コントラスト(Contrast)
色や大きさ、形などを使って異なる要素を際立たせ、情報の優先順位を視覚的に明確にします。
では、実際にそれぞれの原則を資料にあてはめてみましょう。
まずは「近接」です。
「近接」を意識する際に重要なのはグルーピングです。 関連性のある要素を近くに配置し、関連性が薄い要素は離して配置します。
元の資料が以下の状態だった場合、
以下のように修正することで、関連性が明確になり、情報が一目で理解できるようになります。
「近接」が自然に感じられる理由は、私たちの脳が自動的に関連性のある情報をグループ化するためです。
これは、心理学の「ゲシュタルトの法則」、特に「近接の法則」に基づいています。
○効率的な情報処理
脳は、物理的に近くに配置された要素を関連があるものとして認識します。このグルーピングにより、視覚的な整理が進み、情報が理解しやすくなります。
○ゲシュタルト心理学の近接の法則
ゲシュタルトの法則では、人間の脳は、視覚的な要素が物理的に近い場合、それらを1つのグループとして認識しようとします。 これにより、視覚情報を整理して捉えることができ、脳の負荷が軽減されます。
次に「整列」です。
整列は、多くの資料作成ツールに標準機能として備わっており、ガイド線などが要素の整列をサポートしています。
これにより、要素の位置が統一され、視覚的にバランスの取れたレイアウトを作成できます。
(多くのツールが整列機能を導入していることからも、整列が読みやすさに寄与していることがわかります。)
以下のように整列させると、視覚的に整理され、読み手にとっての理解がスムーズになります。
人は規則性やパターンを好むため、整列された要素は視覚的な秩序と安定感を与えます。
これもまたゲシュタルト心理学の原則に基づいており、整列によって情報処理が容易になります。
○視覚的な秩序と安定感
整然とした配置は、安定感を与え、理解しやすさを向上させます。 一方で、乱雑な配置は混乱を引き起こします。
○美的感覚と規則性
人間は、視覚的に調和の取れたデザインや配置に美しさを感じます。
規則的なパターンや整列は、脳が予測しやすく、心地よさや安心感を生み出します。対照的に、要素が不規則に配置されると、混乱や不安を感じることがあります。
続いて、「反復」です。
反復は、デザインのルールを定め、全体に一貫して適用することが重要です。
たとえば、重要なポイントを赤字で示すなど、統一されたデザイン要素を繰り返すことで、視覚的な統一感を生み出します。
以下のように反復を取り入れることで、視覚的な一貫性が生まれ、関連性が強調されます。
反復による一貫性が、視覚的な安定感をもたらし、脳が情報を効率的に処理しやすくなります。
また、ゲシュタルト心理学の「同一性の法則」がこれを説明しています。
○一貫性による視覚的な安定感
一貫したデザインは視覚的な流れを作り出し、脳がパターンを予測しやすくなるため、情報処理がスムーズになります。
○脳のパターン認識能力
人間の脳は、繰り返されるパターンや要素を認識するのが得意です。
反復によってパターンが形成されると、脳はそれを予測しやすくなり、情報処理の負担が軽減されます。
これにより、ユーザーはデザインの流れを素早く理解でき、ページをより快適に利用できます。
○ゲシュタルト心理学の「同一性の法則」
ゲシュタルト心理学における「同一性の法則」によると、人は同じ見た目の要素が繰り返されると、それをグループとして認識します。
これにより、視覚的に整理された情報が生まれ、脳が簡単に理解できるようになります。
反復することで、異なる部分でも「同じ役割を持つもの」として認識されるため、ユーザーは一貫した体験を得られます。
最後に「コントラスト」です。
多くの人が重要な情報を強調しようとする際に使う手法ですが、強調しすぎて全体が目立ちすぎることもあります。
あれもこれもを強調するのではなく、要素を絞ってコントラストをつけることが大切です。
以下のように修正すると、重要な部分が際立ち、情報の階層が明確になります。
コントラストは、色や大きさなどの違いを強調することで、視覚的な興味を引き、重要な情報が際立ちます。
これもまたゲシュタルト心理学の「図と地の法則」に関連しています。
○重要な情報の強調と視線の誘導
コントラストを使うことで、デザイン内の特定の要素が目立つようになります。
人の目は、背景と強く対照的な部分に自然と引き寄せられるため、コントラストが高い要素を優先的に認識します。
これにより、ユーザーにとって重要な情報を視覚的に強調しやすくなります。
○ゲシュタルト心理学の「図と地の法則」
「図と地の法則」によれば、人間は視覚情報を「図」(目立つ要素)と「地」(背景)として認識します。
コントラストを使うことで、特定の要素を「図」として際立たせ、それ以外の要素を「地」として背景化できます。
これにより、どの部分が注目すべき重要な情報かを直感的に判断できます。
今回は、プレゼンテーション資料のブラッシュアップ方法として「デザイン4原則」を紹介しました。
「近接・整列・反復・コントラスト」のどれも、日常的に意識されていることが多いかもしれませんが、改めて意識することでより効果的な資料作成が可能です。
本記事が、今後の資料作成の参考になれば幸いです。